
文系事務員の私が出会った、おもしろい計測器の世界へようこそ。 今回は、入社当時の私が大きな勘違いをしていた**「歪」**という漢字のお話です。
入社して間もない頃、営業さんの指示書を見て納品書を作っていた私は、その文字を当たり前のように「ゆがみ」と読んでいました。
ある時、お客様からの注文書を手に、「ゆがみゲージの注文書をいただきました!」と意気揚々と報告したところ、営業さんが一瞬の沈黙のあと、優しく教えてくれました。
「……これ、『ひずみ』ゲージって読むんだよ。最初は難しいよね」
あの時の、穴があったら入りたいような、でも新しい扉が開いたような感覚を今でも覚えています。
「ゆがみ」と「ひずみ」は何が違う?
辞書を引いてみると、この2つには明確な違いがありました。
・ゆがみ:形が本来の状態から曲がったり、ねじれたりしている「状態」のこと。
・ひずみ:材料に力が加わったときに生じる「変形の割合」を表す物理量。
実生活では「ゆがみ」という言葉の方が身近ですが、計測の世界では、材料がどれだけ伸び縮みしたかを数値化する**「ひずみ(Strain)」**こそが、
安全を守るための共通言語だったのです。
ひずみを測る、驚きの技術
私たちの生活を支える橋やビル、自動車などが壊れないように、目に見えない「ひずみ」を測ることは、品質保証の要です。
1,ひずみゲージ(直接貼る!)
最も一般的なのは、材料の表面に直接ペタッと貼り付ける**「ひずみゲージ」**です。材料がわずかでも伸びれば、
一緒にゲージも伸びて電気抵抗が変わります。その変化を捉えることで、**数マイクロ(100万分の1単位!)**という極小の
変形さえも逃さず数値化します。 ※ただし、きれいに貼るには熟練の技が必要です。
2,光で測る(非接触!)
最近では、カメラで撮影した画像を分析して、表面全体の変形を可視化する「デジタル画像相関法(DIC)」といった光学的な手法も普及しています。
複雑な形でも、どこに負担がかかっているかが一目で分かります。
「正しさ」を守るためのチェックリスト
事務職として20年、多くの伝票を扱ってきましたが、現場の方々が「正しいデータ」を出すためにいかに細心の注意を払っているかを知り、
背筋が伸びる思いです。正確な測定のためには、以下のポイントが欠かせません。
・表面の清浄化(汚れがあると正しく測れません)
・正確な位置と方向(貼る向きが少しズレるだけで数値が変わります)
・温度の記録(金属は温度でも伸び縮みするため、補正が必要です)
まとめ:ひずみは「SOS」のサイン
「ひずみ」は、材料が限界を迎える前に出す、目に見えないSOSのようなもの。 その小さなサインを確実に見つけるために、
歪(ひずみ)ゲージは計測器業界にとって、切っても切れない大切な存在なのです。
読み方ひとつで広がる、深い計測の世界。 数値の裏側に隠された物語を、次回もまた、あなたへ。
次回、かでんりゅうと読んでしまった渦電流をお楽しみに。
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